戸狩を体験する

戸狩トレイル

人里近い山野で自然と文化にふれる、女性・ビギナー層向けの戸狩トレイル

関田山脈の「信越トレイル」に続く里山を歩く「戸狩トレイル」。
民宿を起点に、自然豊かな山道をのんびりと巡ることで、戸狩に息づく文化や人間味あふれる人々の温かさにふれ、この地ならではのやさしさを感じることができるトレイルルートです。

初心者でも気軽に戸狩の自然と文化にふれ合える「戸狩トレイル」

長野県と新潟県の県境を走る関田山脈の尾根上にある「信越トレイル」は、自然のなかで里山の文化を感じながら歩く国内屈指のロングトレイルであり、なるべくありのままの自然の状態を残すために、コースの整備は最小限にとどめられています。そのため、足場が悪い箇所も多く、比較的経験者向けのトレイルと言え、初心者はガイド付きのトレッキングツアーに参加することがおすすめです。
しかし、「本格的なトレッキングは未経験だけど、自然を巡ってみたい」「時間がないけど、里山の文化に触れたい」「信越トレイルに挑戦してみたいけど、子連れで心配」という方も少なくないのではないでしょうか。そんな方におすすめなのが、戸狩の里山を巡る「戸狩トレイル」。3つのモデルコースがあり、いずれも自然あふれる景色のなか、水場や歴史スポットなどを巡りながら、戸狩温泉スキー場の麓からとん平高原の山頂までを周遊することができます。コース上には多くの見どころがあって、標高300~400mの里山のため起伏も激しくなく、山道にはウッドチップが敷かれているなど、非常に歩きやすいルートとなっています。また道標がしっかり立てられており、迷うこともなく、初心者や子どもも充分に楽しむことができます。
いくつものコースの組み合わせで、さまざまなルートを巡ることができ、何度歩いても新しい発見がある戸狩トレイル。どのルートも周回コースとなっているので、体力に合わせてルートを延ばしたり、短縮することもでき、スポットの歴史やいわれを立て看板で紹介しているため、里山の文化を知ることもできます。 また、トレイルを巡った後の、戸狩温泉「暁の湯」の気持ち良さはひとしお。どちらの温泉も疲労回復に効果のあるアルカリ性単純温泉で、露天風呂からの眺めも最高です。

高源院~不二見橋~スキー地蔵~大ケヤキ~風穴~コバの清水ルート

いくつかある戸狩トレイルのルートですが、最も一般的な入り口は、戸狩温泉スキー場の入り口、高源院の山門から始まるコース(戸狩トレイルの「1」と書かれた道標が立っています)。ここからいくつかの道を巡ってみましょう。

まず最初は大ケヤキや風穴、清水など、戸狩の自然をゆっくり堪能するのに最適なルート。1周は約7km、2時間半ほどの周遊コースです。

「1」の道標から800mほど進むと、道標「3」のある「不二見橋」が見えます。この不二見橋を分岐に、左側に進むと、200mほどの地点に、もうひとつの戸狩トレイル入り口・戸狩温泉ペガサスゲレンデにつながるルートがあるので、ゲレンデ方面から戸狩トレイルに入ることもできます。この分岐を越え、500mほど登った場所にあるのが「スキー地蔵」。戸狩温泉スキー場の開設30周年を記念して、昭和61(1986)年にゲレンデの高台に安置された地蔵で、スキーヤーの安全を見守る全国唯一の地蔵となっています。

スキー地蔵を経由して300mほどのところに、麓の「黒坂薬師堂」に湧く名水「日光ゆきしみず」の水源があり、その先に大人4人が手を回しても届かないほどの大木「大ケヤキ」の木があります。大ケヤキの分岐路を左方向に進み、さらにその先、「15」の道標が立つ分岐を左に進むと300mほどのところに「風穴」があります。「風穴」は、かつては存在は知られていたものの正確な場所がわからず、地元では幻と言われていましたが、2007年にかけて行われた戸狩トレイルの調査で発見されました。岩と岩の間から吹き出る涼風を感じることができます。

風穴を過ぎ、「17」の分岐を右に進み(この間、信越トレイル上を歩く)、500mほどにある信越トレイルの道標のある分岐を右折して下ると、「コバの清水」があります。この清水は真夏でも手がちぎれるほど冷たい湧き水で、コバは「強場」と書き、麓の高源院を示すのだとか。コバの清水からさらに1kmほど下ると、大ケヤキに戻ります。大ケヤキからもと来た道を高源院まで戻っても良いですが、時間があれば、大ケヤキの分岐を左方向に進んで、1.7kmほどでとん平ゲレンデにあるレストラン「スカイトップ」に辿り着くこともできます。トイレや水場、駐車場が完備されているので、お昼を食べたり、高原で遊んだり、沢遊びをするのに最適な場所。ここまではクルマで来ることもできるので、宿の人に迎えを頼んでも良いでしょう。

なお、信越トレイル上で、コバの清水への分岐を下らず、そのまままっすぐ進むと、1kmほどで信越トレイルのセクション4の入り口にあたる仏ヶ峰登山口に到着。そのままセクション4に入ることもできますし、大パノラマのとん平高原を下れば、こちらからも「スカイトップ」に辿り着くことができます。



高源院~不二見橋~とん平高原~のろし台~お小夜滝~百体観音ルート

こちらは、戦国時代ののろし台や伝説の滝、百体観音を巡る、里山の文化にふれるルート。1周は約5km、2時間ほどのルートです。

高源院から不二見橋まで進み、不二見橋の分岐を右方向へ。200mほど先にある「4」の分岐を左に登ります。水がきれいな沢沿いを進む気持ちのよいルートで、小さな沢のため、子どもが遊ぶのにもちょうどよい大きさ。この沢沿いを1kmほど登った先にとんだいら高原が開けます。このとん平高原から400mほど登った小高い丘の上には戦国時代の要所「城山のろし台」跡にがあります。

とん平高原にあるのが、「お小夜滝」。恋にやぶれた娘・お小夜が飛び込んだという伝説の滝で、浅い滝壺があり、夏場に子どもが水遊びをするには絶好のポイント。またとん平高原のレストラン「スカイトップ」の前の湧き水「お小夜の涙」は、この滝の伝説から命名されています。 スカイトップを正面に見て、左方向に進むと「11」の道標を経て、「10」の分岐点に。この分岐を右に折れ、少し進むと自動車の通れる舗装道路に出ます。ここからの麓の眺望は抜群で、夜は星空と夜景も見事。夜間はスカイトップの駐車場をめざして自動車で上ってくるのも良いでしょう。(ただし、道路が狭いので要注意)この舗装道路を500mほど下ると、「9」の道標がある分岐点に着きます。この分岐を舗装道路とは違う山道に下って行くと、丸太でできた階段の横に小さくて素朴な100体の石の観音が並ぶ「百体観音」のエリアに。この観音は、明治34(1900)年10月28日の夜、地元のお年寄りの枕元に観音様が立ったのが誕生のきっかけとされています。多くの賛同を得て、100体が完成したのが、翌明治35(1901)年8月10日のこと。すべて地元の石工・小林貞治の作と言われており、下から「西国三十三番」「秩父三十四番」「坂東三十三番」の順で一体ずつ番号を背負っています。一体ごとに手を合わせることで、各地に巡礼したご利益と同じ効験が得られるとされています。

またこの百体観音一帯はツツジの名所でもあり、春にはたくさんのツツジに包まれながら観音を拝むことができ、季節によってはヤブツバキの群生や、ササユリ、ショウジョウバカマと言った花々を愛でることもできます。百体観音エリアを下った先に、もと来た「4」の道標が見えて来ます。



とん平高原~北条歩道入り口~丸山の堤~不動滝ルート

とん平高原まではクルマで来て、山中の滝・不動滝をめざす、片道1.7kmのルート。滝の近くは足場が悪く、往復で2時間ほどかかります。

とん平高原のレストラン「スカイトップ」を正面に見て、左方向に進むと「10」の道標へ。ここの分岐を左方向に進みます。すぐに「北条歩道」の入り口に到着。北条歩道は、かつて、その先の小沢峠を越えて新潟県へ通じる塩の道があったルートで、信越トレイルの一部になります。北条歩道を通らず、分岐をまっすぐに進むと、1kmほどで「丸山の堤」という池へ。さらにその先400mのところにあるのが、圧巻の「不動滝」です。こちらも2007年の戸狩トレイルの調査の際に発見されたもので、かつては「幻の滝」と呼ばれていたもの。滝までの道はぬかるみがあって滑りやすい道のため注意が必要ですが、高さ15mほどから流れ落ちる滝はマイナスイオンたっぷりといった風情で、ここまでの疲れが吹き飛ぶよう。この滝もお小夜滝同様、浅い滝壺があるので、水遊びをすることができます。

また、不動滝の上には「お不動様」が祀られていますが、鎖場となっているので、気をつけて進みましょう。「丸山の堤」の脇からは、麓の蕨野の民宿街まで下る山道がありますが、やぶが多いため、もと来た道を戻るのが無難です。

かつての戸狩エリアの里山は、管理されないまま草木が茂り、荒果て、整備が行き届いていない古道は歩道としては機能せず、危険なため地域住民も里山へ足を踏み入れなくなっていました。先人達が残した史跡の存在も忘れ去られようとしていたのです。そこで、平成17(2005)年に地元の有志により「荒廃した里山に手を入れ、自然や歴史をもう一度見つめ直そう」と戸狩トレイルクラブを発足し、翌年の2006年と2007年にかけてトレイルの調査、整備を進め、2008年、戸狩の里山を巡る「戸狩トレイル」が完成しました。

今も、地元の「戸狩トレイルクラブ」を中心に、地域の人々により、草刈りやウッドチップを敷くなどの保全が行われ、人と自然が共存する里山の風景が守られています。また、トレイルを示す道標は豪雪の被害を避けるため、毎年冬が来る前に撤去され、雪が解けた後、また人々によって再設置されています。

こうした保全活動を知りながら、地域の自然や文化にふれると、よりいっそう戸狩の人々の温かさを感じることができるのではないでしょうか。



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