飯山市富倉地区にゆかりのある郷土料理
「笹寿司」は、飯山市富倉地区で古くから伝わる郷土食。天然の笹の葉の上に酢飯を敷いて、その上にさまざまな具材をのせた料理です。
富倉地区にほど近い戸狩の宿では、信州の郷土食の歴史や文化に触れられる「笹寿司作り体験」が楽しめます。
笹寿司の歴史は古く、一説では1553年に始まる川中島の合戦の際、富倉の地で休息をとった上杉謙信の軍勢に、地元の人たちが笹寿司を献上したことが始まりとされています。そうした歴史から、飯山市では笹寿司のことを「謙信寿司」とも言います。また、笹の葉には殺菌、防腐効果があり日持ちすることから、戦の時の保存食として重宝したようです。酢飯の上には、ぜんまい、しいたけ、鬼くるみ、大根のみそ漬けなどの山の幸を中心に、錦糸玉子や紅しょうがなどの彩りが添えられます。北信地域で古くから親しまれてきた郷土料理として、2007年には長野県の選択無形民俗文化財にも指定されています。今日でも飯山市では季節を問わず、祭りや家庭での祝いごとなどの際に笹寿司を作りもてなす習慣が習慣が残っています。地元の宿や飲食店などでも提供され、道の駅などではお土産としても人気です。
材料は、ぜんまい、しいたけ、鬼ぐるみ、大根のみそ漬けなど、地域の山里で取れる食材が中心です。笹寿司は、長野県以外でも新潟県、石川県、富山県などで古くから食されています。北陸地方では鮭や鯛、サバなどの魚介類を具材にした押し寿司が一般的で、地域によって材料や作り方が異なり、それぞれの特色が表れています。
笹寿司の材料
北信地方の笹寿司に使われる主な材料は次の通りです。
●笹の葉 | 【具材】 |
---|---|
【シャリ】 | ●大根の味噌漬け |
●米 | ●干ししいたけ |
●もち米 | ●ぜんまい |
【合わせ酢】 | ●削り節 |
●酢 | ●紅しょうが |
●塩 | ●くるみ |
●砂糖 | ●薄焼き卵 |
作り方
1 米ともち米を混ぜ、1時間前にといでおき、分量の水で炊く。炊きあがったら10分蒸らし、熱いうちに合わせ酢を振りかけ、切るようにしてまぶす。
2 卵は砂糖、塩で味をつけ、薄焼き卵にして短冊に切るか、煎り卵にする。
3 味噌漬けは5mmくらいの粗いみじん切りにする。もどしたぜんまいは1〜2cmの長さに切り、軽くしぼって水を切る。干ししいたけは水でもどし、石づきを取って粗いみじん切りにする。
4 フライパンに油を熱し、ぜんまい、干ししいたけをさっと炒め、味噌漬け、削り節、砂糖を加えて水分がなくなるまでよく炒めて味をととのえる。
5 笹の葉の付け根を少し切り落とし、先端は斜めに切って適当な大きさにそろえ、よく洗って拭く。
6 手に酢水をつけてすし飯を軽く一握り取り、笹の表に楕円形に広げ、真ん中をへこませる。
7 6の上に4をのせ、2と紅しょうが、くるみを彩りよくのせる。手のひらでかたちをととのえながら軽く押す。
8 お盆等に平らに重ね、上に笹の葉をのせて軽く手で押さえる。 ※専用の四角なすし箱に笹、ごはん、具を何段も重ねる押しずし風のつくり方もある。
レシピ提供元名 : 「未来へつなごう ばあちゃんの味 かあちゃんの味」(飯山市食の風土記編集委員会)
笹寿司作りは戸狩温泉の宿で体験することができます。内容はそれぞれの宿によって少し異なりますが、ここではその一例をご紹介します。
笹寿司作り体験の内容
宿の女将さんの案内で山へ行き、笹の葉採りをするところから体験は始まります。小川や野山の草花を観察しながら、山に生える笹の葉を採ります。その際に女将さんから「いつから食べられるようになったのか」「どうして笹の葉に包むのか」といった笹寿司の歴史や由来についての話が聞けます。宿に戻ると、テーブルの上に用意されたシャリと具材で、笹寿司作りに挑戦。女将さんが手際よく作るお手本にならって、丸く握ったご飯を笹の葉の上にのせて、彩り豊かな具材を重ねます。笹寿司ができ上ると、お待ちかねのお昼ごはん。昔の人の生活に思いをはせながら味わうのも一興です。
笹寿司作り体験は、食を通して信州の歴史や文化を知ることができる、おいしくて楽しいプログラムです。ぜひ戸狩を訪れて、地域の伝統食に触れてみてはいかがでしょうか。